よく起業においては成功、失敗ということが話題になります。どうも多くの人は失敗すると考えがちですが、成功や失敗の判定はどこで決まると思いますか。わたしの中では、起業は自分で失敗を認めない限りは成功の只中と思います。そして今注目は、ステーキ一筋の一ノ瀬邦夫さん(81歳)です。
一ノ瀬さんは若い時から料理一筋の人。ただ一躍一ノ瀬の名前を有名にしたのは、1994年の「ペッパーランチ」の開業です。それまでステーキ料理というとひっそりと落ち着いた高級な店ばかりだったのが、ペッパーランチは広く誰もがドアを開けて入店しやすい低価格のステーキ店でした。
フランチャイズシステムを導入したこともあり、繁華街にはどこにでもあるステーキ店として広がりました。ただ従業員の不祥事などもあって一ノ瀬さんの手を離れることになります。その後に開業したのは「いきなりステーキ!」です。今から10年前に手ごろな値段で食べれるステーキ店はたいへんな話題になりました。
ただあまりに短期間に多くの店舗を出店したため、各店の運営や調理技術が追いつかない事態に陥りました。5年もしないうちに脱落する店舗が相次ぎ、フランチャイズシステムは崩壊しました。一ノ瀬さんは71歳に始めた事業ですから、ここで終止符を打つことになると思われていました。
ところが81歳で三度目のステーキ人生を始めることになります。昨年11月に「和牛ステーキ和那(わくに)」を東京・墨田区で開業しました。一ノ瀬さんの起業人生はまだ終わっていなかったのです。今度は以前のように店舗の拡張路線には踏み出さず、この1店だけに注力するようです。
今高齢者の人の話で興味深いのは、65歳や70歳でリタイアしてもその後の人生が想像以上に長いことです。最初は旅行やフィットネスなど連日楽しい時間を過ごせても、その後も人生は続きます。健康な人ほど、その後の時間は想像を絶するほど長いものになります。
また日ごろから健康に留意している人は、80歳を過ぎても何時お迎いにくるのか分からない人が多数います。あまり健康過ぎるのも問題になるのです。健康なほどお金も使いますから。一ノ瀬さんの事業熱は、高齢者の新しい生き方を教示しているようにも思います。
日本の身体は面白いもので、70代80代になっても運動をして身体の部位部位の骨と筋肉とを動かすと、幾つになっても身体は動くし筋肉も付くようです。この脳にも同じことがいえます。ただし50代くらいになると、逆に動かしていないとどんどん柔軟性はなくなっていきます。怪我もしやすいですし、新しいことを考える能力も衰えていきます。どちらをとるか本人の判断ですが、楽しい人生を送るためにはいつまでも努力は欠かせないようです。
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