起業というと反射的に資格試験を考える人が今も少なくありません。多分コマーシャルなどで資格取得などによって、豊かな中高年生活をイメージさせられている人が多いためと思われます。毎年大勢の人が、行政書士や宅地建物取引主任者などの資格試験を受験してきました。
問題は資格試験に合格したからといって簡単に高収入というわけにはいかないことです。一つ例を上げますと、高収入で知られている弁護士資格です。司法試験に合格することが条件ですが、現在は毎年1400人~1500人が合格しています。この人たちが裁判官や検事、弁護士になります。
ところが民事、刑事事件数は毎年減少していますし、弁護士数は毎年どんどん増えています。その結果メディアに大量の広告を流し、貸金業者から利払い金利の払い過ぎを戻させるビジネスに手を染めるようなことをしています。これまで士業では最も年収が高いと云われた弁護士でさえ汚れ仕事に手を出さざるを得なくなっています。
しかも弁護士業務は、今後生成AIにとって代わられる可能性が最も高いと云われています。弁護士は過去の判例を元に裁判で戦いますが、AIは過去のデータを抽出するのが最も得意な分野です。人間に代わっていくらでも過去のデータを選び出しますから、弁護士業務にとっては大変な脅威です。
既に弁護士事務所では、司法書士や行政書士の領域にまで弁護士が業務を拡大させています。過っての日本の経済成長期には、士業の従事者が少なく地域によっては探すのに苦労した時代もありました。それが180度逆転し、高学歴者が多数生まれて今度は需要よりも供給する弁護士が増えています。
もし資格試験に合格したとしても一定期間の訓練期間が必要ですし、その後の顧客作り期間が今は想像以上に長くなっています。士業の親から顧客を引き継ぐとか、勤めている士業の事務所で顧客を引き継ぐなら別です。まったく足場のない人が資格だけを取得してもまったく猫に小判状態と考えた方がよいです。
この国は過去も現在も、新たな起業に対しては冷たい国です。そのためいつまで経っても起業する人は増えません。経済も硬直化していて新たな会社と古い会社ほとんど実現していません。士業が活発にならない原因は、この昔の会社がいつまでも大手を振るって生き延びているところに、日本経済の衰退があると考えます。人間には寿命があって新旧が入れ替わることで活力を生みますが、会社にはこの入れ替わりがほとんどないことが致命的といえそうです。
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