日本ではコロナ感染が収まった23年以降、多くの会社が販売価格をどう引き上げるか悩んでいます。物価上昇率は2.0%を超えていますから、ある程度引き上げないと利益を出すことができません。ただ上げ過ぎると今度はお客さんから反感を買い、これまでお馴染みになっている固定客を失うことになります。
全国展開を続けるレストランのサイゼリアは、企業物価が上昇を続けるなか価格据え置きで頑張っています。ファミリーレストランとファストフードとの中間に位置する業態で、コロナ前と比べてほとんど価格を引き上げることなく、燃料費や野菜価格の高騰が続く中でも踏ん張っています。
サイゼリアの価格は以前から低価格だったうえでの価格据え置きですから、経営は相当厳しいと思われます。インフレ経済のなかでも価格を据え置くために、メニュー数を減らすことで食材の仕入れ品目を減らしています。これまで通常メニューは141品目でしたが現在は101品目にまで減らしました。
また全国展開の店舗数を昨年夏までに店舗を1038店に伸ばしています。個々の店舗の利益は多少は減っても、店舗数が多いことでトータルの利益を減らすことはありません。全国チェーンを展開している飲食店では「1000店の壁」があると言われてきました。
マクドナルドやガスト、ドトールといった出店数が1000店を大幅に超えたチェーン店の経営は楽になるといわれます。ただ1000店前後の飲食店は経営でつまずく会社が多いようです。しかも現在は長いこと経験したことのないインフレのなか、サイゼリヤは価格を引き上げずに頑張っているわけです。
飲食店での価格問題と他の業種ではその対応はまた違っているはずです。ただ価格を上げるにしろそのまま据え置くにしろ、長期的にみると顧客との信頼関係の構築に成功している会社はその後に悪い影響が残ることはありません。無理して値上げせずに廃業に追い込まれるケースも多いです。しっかりした戦略の構築をどうします?
このところメディアでは「2度目の価格引き上げに成功」とか「昨年から3度目の値上げ」といった報道が目立ちます。価格を上げても売上げが伸びていると成功したと報道されます。ただ価格引き上げはそれほど単純ではなく、2度3度と引き上げを続けているうちに徐々に売れなくなるケースがよくあります。代替品のない商品のはずが、顧客側が代替品を見つけて次々に切り替えていくケースです。特に現在はネット情報が世界に広がる世界。あまり調子に乗っていると、取り返しのつかないことが起こります。
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