わが国は長いことコメ政策に悩まされ続けてきました。過ってはコメ不足によって大正時代にはコメ一揆が起こっています。戦前も冷夏によってコメ不作が起こり、東北地方では30年代に飢饉が続きました。5.15事件、2.26事件といった軍事クーデターにまでコメ不足で発展しています。
そのため戦後はコメの増産が大きな課題になり、その結果今度は大量の余剰米を抱えることになりました。農業従事者は自民党の支持層でもあり、米作は長いことわが国の政治では聖域とされてきました。そのコメが昨年から不足する事態に陥っています。岸田内閣までは十分需要に応えられると言ってきました。
しかし今の現状を考えると、コメ不足はたいへんな問題ではないかと思えてきます。まずコロナ感染の沈静化以降に急速に増えている外国人観光客です。昨年は3600万人が日本に来て食事をしています。外国人が日本に来て、イタリアンや中華料理を食べに来るとは思えません。
やはり寿司や和食を中心の食事になると思いますから、コメの消費量が各段に増えているはずです。また昨年は、日本から海外向け農産物の輸出額が1兆5千億円と過去最高を記録しています。現在は世界的な日本食ブームが起こり、海外の主要都市には日本食レストランが次々に開業しています。
日本食の主役は何といってもコメです。以前のコメの生産量に対して消費量は圧倒的に増えています。しかもコメ生産者の高齢化はもう目を覆うところまで進んでいます。大規模生産者を除くと、ほぼ60代、70代が生産の中心世代です。この先、いつまで現状の生産量を維持できるのか難しいのでは。
世界的には米国やタイでも米作は盛んです。ただ現在人気を集めている寿司やおにぎり用のコメは、やはり水耕栽培の日本産でなければムリといわれます。これからのビジネスを考えても、需要に対して生産量の少ない国産米を使うビジネスはリスクが大きそうです。調達先を考えた上で、コメ活用のビジネスは判断するべきです。
過っては生産しても生産しても利益のでないコメと言われました。自民党政権はそれでもコメを買い上げ、細々と生産農家に利益を渡すのが日本の財政赤字の原点と思われます。全国の農協を頂点としてピラミッドが大きな力をもっていました。今その構図は大きく変化しています。ただ農業団体の金融部門農林中央金庫は昨年、外債運用の失敗で1兆4千億円の赤字を出してます。09年にも5700億円の赤字で話題になっています。民間ならとうに倒産している団体ですが、コメの威力によって農家を食い物に事業を続けています。
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