4月2日米国トランプ大統領が、新たに他国への関税策を発表したことで世界経済は混乱に陥っています。日本や米国ばかりでなく、中国もドイツも英国もフランスもほとんどの国の株式市場は急落しました。リーマンショックや1990年代末の世界金融危機と同等か、それ以上の金融不安を予想する専門家がいます。
米国は過去にも、1971年ニクソンショックの時に輸入品に対して10%の課徴金をかけています。1985年のプラザ合意の時もドル高是正で当時のレーガン大統領は大規模なドル売りをしています。ただ今回とよく似た関税政策となりますと、1930年6月17日の関税法改定があげられます。
当時のフーバー大統領は今回のトランプ氏と同じように、890品目の輸入品に対し平均課税率40%といわれる高関税を課しました。このタイミングは、世界大恐慌が米国で発生した1929年10月24日から8カ月後のこと。大恐慌により世界的規模で金融機関や大手企業の倒産が相次いだ直後のことです。
この時代、世界は軍国主義が闊歩していた時代です。高い関税を課された国は報復関税に走りますから、世界経済は大混乱に陥りました。そのうえ不況の中でも列強各国は軍備増強に大きな資金を投じます。フーバーの関税策から9年後には第二次世界大戦を引き起こされます。トランプ関税とフーバー関税の全てが同じとは思えません。
ただ各国が報復関税や軍備増強を競い合う、きっかけとなる号砲の役割を果たしそうなのは確かです。しかも95年前とは違い、先進国と途上国の格差は大幅に縮まっています。最貧国の北朝鮮が核兵器を保有する、過去にはなかった物騒な時代に入っています。
やはり一つ歯車が狂うと、日本も戦争に参戦している可能性はゼロではありません。米国は関税ばかりでなく、この地球上で第二次大戦後最も戦争経験の多い国です。また何度も参戦した割には、なかなか勝利することの少ない国でもあります。日本はその国と同盟関係にあるわけですから、危機感は強めておいた方がよいのでは。
今後あと数年もしたら、トランプと親しかったなんて経歴は人生の汚点になるような気がします。大恐慌のフーバー大統領は大変強い批判を浴びています。ただ過っての行動に反省をしたのか、後年は弱者救済で国際的に高い評価も受けています。それでも大戦で多数の兵士や市民が亡くなったことを考えると、フーバー関税はあまりに多くの人を苦しめたといえます。
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