亡くなった森永卓郎さんが火付け役となって、財務省に対する批判がとても強くなりました。国会議事堂周辺では財務省の横暴を批判するデモも行われました。ただし日本の財政をコントロールする財務省に対する批判が、一方でわが国の景気を刺激ため歯止めなしに、無制限にいくらでも財政赤字を膨らませて大丈夫という話は危険です。
世界の基軸通貨であるドルを発行するアメリカでさえ、財政赤字が膨らみ過ぎたことでトランプ大統領は関税を引き上げ赤字減らしに奔走しています。日本も断トツの世界一の財政赤字による影響で、真綿で首を絞められる状態に入っています。財務省の横暴に反対だから、財政規律の必要はなしといった二者択一は危険です。
歴代のわが国政権は巨額のムダを各省庁に発生していて、このムダをなくさないことには日本の財政はいつまで経っても危機的状況が続きます。今回のコメ不足によって見えてきた日本の農業政策などはその典型です。農業研究者の山下一仁さんが以前から主張していることですが、農水省のコメ政策の失敗が今回コメ不足で現れました。
戦後長いことコメ作りを農水省が管理してきました。これが食管制度ですが、1995年には一度農水省は廃止しています。しかし作り過ぎたコメを農水省が買い取るカタチで減反政策は続いています。18年にはこの減反も止めることにしましたが、実際には農家向け補助金と飼料用米への転作を促すことで、主食用米の生産量は抑える仕組みが残っています。
そのため今回のコメ不足が発生した時には、仲介業者がコメをため込んでいると云ったデマを流すことで、政策の失敗を隠そうとしたようです。市場の需給動向に任せて自由にコメを作られると、農水省の存在意義がどんどんなくなってきます。過っては農水族と云われる議員も多く、大きな予算を動かす巨大省庁の一つでした。
現在は兼業農家を含めた農業従事者は136万人です。漁業従事者が12万人と合わせると148万人が相手の省庁。全労働者数は6957万人ですから、根本的に農水産業に対する考え方を改める時期にきています。生産者の高齢化でコメ不足が深刻なのに実質的な減反を進め、コメの輸出を奨励するちぐはぐな政策を考え直す時期にきています。
企業においても全社的なデジタル化を進めようとすると、人余りが問題になりそうな部署ではなんだかんだ言い訳を考えて予算と人とを減らすまいとします。会社の向かう方向とは反対の方向に向かっていることにも目を閉じて向かおうとします。このような部署が増えると会社は倒産に向かうことになりますが、日本政府でも同じようなことが起きています。ここは国民の力で新たな農水政策を考えないと、自民党の力学に押し切られることになりそうです。財政赤字ばかりが増えます。
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