1月12日静岡県清水港から探査船「ちきゅう」は、1900キロ離れた南鳥島に向けて出発しました。中国の輸出差し止めによって、工業製品の製造に支障がでているレアアース採取が可能かどうか、調査下準備のために向かったのです。日本から遠方の南鳥島まで行き、そこで水深6000メートルのレアアース泥を対象に調査するためです。
これほどの大掛かりなレアアース調査は世界初と云われます。現在、日本ばかりでなく世界の精密品製造にかかわる各国は、中国がレアアースの輸出制限を進めるため製造に支障が起きる事態を心配しています。ただ日本国民の中にはこのレアアース不足を誤解している人が多いようで一度整理したいと思います。わたしも過って誤解していた一人です。
〇 レアアースという名称から地球上に少ない希少金属をイメージしがちですが、決して中国以外で採取できないわけではありません。過ってはアメリカが最大の生産国でしたし、オーストラリア、ミャンマー、タイ、ベトナム、インド、フランスでも見つかっています。
〇 一般的にレアアースと括っていますが、代表的な種類としてはEV用磁石のネオジム、ジスプロシウム、サマリウム、LED用のイットリウム、原子炉向けのカドリニウムなど主要17種を中心に他にもいろいろな用途に使われています。
〇 世界規模のレアアース市場としては約6兆円にも膨らみますが、その中の1種ネオジムだけで考えますと日本では精々1千億円程度の市場です。多く精製し過ぎますと生産過剰となって価格の値崩れがおきてしまいます。ネオジムの代替品を開発することも可能と云われますが、開発費用と中国産ネオジムの輸入を比較しますと中国産が圧倒的に有利です。
〇 またレアアースの加工過程で発生する放射性物質は、原子力発電所での使用済み廃棄物の後処理と同じでたいへんな費用とスペースと時間とを必要とします。中国のような広大な土地を持ち、共産国で政府の方針が絶対の国でないと製造は難しいです。
日本にとってレアアース不足が問題化したのは今回が初めてではありません。日中間で尖閣列島の所有権問題が深刻になった2010年にも、中国は対日輸出を大幅に減らしています。当時の政府は真剣に中国依存を低くして、一時は80%強から57%まで依存を減らしました。現在はまた70%台まで依存は増えています。
日本でのレアアースに関して、この世界で30年以上研究を続ける東京大学岡部徹先生の発表を参考にさせてもらっています。レアアースの最大の問題は、一つは加工する時に発生する放射性物質の処理。原子力発電の廃棄物と同じように処理方法が確立していないためその処理がブラックボックス化している中国の依存が高くなります。
またどこかの政府や企業が本気でレアアース生産に取り組むと、今度は生産過剰になって作れば作るほど赤字になる負の連鎖を産みます。共産主義国の中国は鄧小平時代に国家戦略としてレアアース作りに取り組みました。戦略のない日本は一時的に確保はできても長い期間の取り組みはムリのようです。現状ではまだまだ長引きそうです。
レアアースの調査船「ちきゅう」が南鳥島まで行って海底からレアアースを引き上げる計画を聞いた時、日本国中の人から1円ずつ集めて1億2千万円作る話を思い出しました。確かに1円募金ならお金を出してくれる人は多そうです。ただ費やす時間と移動と説明とを考えたらやはりムリです。中国の恐怖を煽る目的でレアアースをネタにしようとする人はいますが、日本経済の将来を考えるとわが国の最大の貿易相手国はもう少し賢く利用すべきと思います。
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