起業には、ベンチャーによる起業とか、ネットビジネスによる起業、従来型のビジネスによる起業、フランチャイズによる起業など、その幅は想像以上に広い。
そんな中に「通信回線を所有することによる起業」という言葉が、新聞広告に出るようになったのは2000年になってから。一千万円以上の初期投資を行うことによって、IP電話の
近未来通信が所有する通信設備の回線オーナーになるというもので、全国紙の一面広告を行ってオーナー集めを行っていた。
プロ野球マスターリーグの札幌アンビシャスのチームサポートスポンサーになったり、女性ゴルフトーナメント「近未来通信クイーンズオープン」を主催したりと、社名を売り込むためのPR活動は積極的だった。
この会社は一方ではオーナー集めに熱心で、「近未来通信では、起業・新規事業・副業に最適なIP電話ビジネスのオーナーを募集してます。通信事業は寝ていてお金を稼げます」といった調子で、ITに関する情報に疎い主婦や高齢者から資金集めを行ってきた。
ただ不思議なことに、オーナー集めには異常なまでに熱心だが、通信利用者に向けてのPR活動はほとんど行われた形跡がない。また、会社の売上げ約245億円(05年度)としているが、それ以外の数字はまったく公表させていない。今回はあまり実態の知られたくなかった財務内容が公になった。
この会社に
東京国税局の税務調査が入って、これまでブラックボックスだった財務内容が国税局の知るところとなった。その上、1年間で6億5千万円もの申告漏れが明らかになり、2億5千万円もの追徴課税を払わせられる羽目になった。笑っちゃ悪いが、脱税とその追徴によってIP通信のはずが糸電話だった近未来通信の舞台裏が見えてしまったのだ。
多分、新規オーナーが集まらなくなったとたんに、既存オーナー向けの配当はショートしてしまうのだろうが、この子ども騙しのようなビジネスにも、起業やオーナーの名の下に資金を投資する人たちの脇の甘さに怖い気がする。
起業家が家で寝ていてお金が稼げることなど、絶対にありえないことを肝に銘じるべきだ。
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