Fさんは昔から起業を考えていて、以前に相談に乗ったことがある。彼からの1年ぶりのメールで、多摩地区の繁華街で金券ショップを始めたことを知った。
彼は、30代半ばで食品問屋に勤めていたが、以前の話では、将来を考えて早い時期に起業したいと云っていた。
それが、1年ぶりのメールでは、始めたばかりの金券ショップの売上げがひどい状態で、開店1カ月にして早くも撤退を考えている様子。
金券ショップの開店にあたっては、奥さん以外には相談をしなかったが、運良く繁盛店をいきなり射抜きで譲ってもらえることになり、ばたばたと貯金をはたいて引き継いだ。勤めている会社を辞める間もない話だったので、奥さんに店番をさせて、Fさんとは仕事先で連絡しながらの運営をしている。
奥さんは若い頃衣料品の売り子経験があるらしく、お客さんとの接客を楽しんでいるが、経営状態は相当厳しい状態らしい。
一つは、ネットにお客さんを奪われていて、来店客は多いが価格を確認するだけで購買するお客さんは少ない。高額のハイウエーカードやビール券、図書券など、偽造券が多いために発行中止になって、扱い商品が不足している。
今は、金券ショップ大手も他のビジネスへの転業を試みているように、商売自体の存続が危ういようだ。
Fさんは、会社を辞めていなかったのが不幸中の幸いで、開店2カ月で金券ショップを閉じて今は大人しくしているようだ。それにしても、あまりにも業界情報の少ないなかで、慌しい開業だったので、まるで事件に巻き込まれたような気分とメールに書いていたが、早くから準備をしながらお粗末過ぎる起業話である。
ネットでのビジネスがドンドン増える中で、消えていくビジネスもあることをお忘れなく。