グッドウィルグループの折口雅博さんが、最後までしがみ付いていたグループ会長の職を追われて、経済界の表舞台から姿を消すことになりました。1990年代に誕生した起業家としては最も成功した一人と言われ、経団連の理事にまでなった若い経営者が、みずほ銀行から米ファンドと米証券の2社連合への貸出債権の譲渡によって、足場を失ったようです。彼は、コムソンの営業停止以降の緊急事態の時に、34%近い所有自社株を担保としてドイツ銀に差し出して資金を借りていたようです。みなさん、元気にお過ごしですか。
わが国では、成功した起業家の軌跡ばかりに注目が集って、失敗すると見向きもされませんが、実際に起業にとって役立つのは失敗した起業家の軌跡と思いますので、折口さんに触れてみようと思います。彼の人生で最大のポイントは、サッカリン工場を経営していた父親会社の倒産だと思います。砂糖の消費多い時代で、サッカリンは砂糖に代わる代用甘味料でした。そのサッカリンに発ガン性があると言うことで、破産、両親の離婚、生活保護生活と、10代の彼の人生は急降下しました。
学費の掛からない防衛大学校を卒業して、商社の日商岩井時代にディスコの「ジュリアナ東京」で成功し、起業に際しては人材派遣のグッドウィルを立ち上げました。また、高齢化社会の到来をいち早くビジネスとして具体化させた、介護ビジネスのコムソンを吸収して会社規模を飛躍的に拡大しました。大手請負会社のクリスタルを買収することで、90年代に創業した企業としては最も早く売上げ5千億円企業に名乗りをあげました。
ただ、彼の成功もこの辺までで、07年からはコムソンでも、グットウィルでも、不正行為が明らかになって、最も成功した起業家の冠を外すことになります。彼のビジネススタイルを見ると一目瞭然なのですが、介護、派遣、請負と労働者を安い賃金でこき使う仕事ばかりをしてきたのが特徴です。公的な資金を不正行為で騙し取るとか、労働者に低賃金を強いるとか、自分の利益を確保する以外に誰も利益を得ることのない仕組みを作り上げています。
ITビジネスの論客、梅田望夫さんの「ウェブ時代 5つの定理」によりますと、シリコンバレーに集う起業家の人たちは、「この世界をよい場所に」が共通のコンセンサスで、新しく作る製品も仕事も、少しでも世の中に役立つことを念頭に開発していると言います。そういう意味では、折口さんには、自分の利益以外にはほとんど社会に利益をもたらすことはなかったようです。
これから起業して、大きな会社を作ろうと野心を燃やしている人に言いたいのですが、やはり起業には理念が重要で、そこには少しでも社会のためになることを考えた起業を目指すべきだと思います。折口さんの失敗は、この理念の欠落にあったようです。
《現在、起業ランク17位から17位へ変わらずです。
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